17年間続けたカフェを辞めることになった根本的な原因とは?~後編~

自営業の経営裏話

前回の記事を読んでいない方はまずこちらをどうぞ

さて、前回の終わりに、飲食店の仕組みに問題があるという話をしましたが、それは一体どういうことかというのが今回のお話。

時間の価値

例えば、副業で有名なブログ。

アフィリエイトなどの広告収入で利益を得ることができるわけですが、この仕組みの一番重要なところはロスがないことです。

ロスには色々あって、単なる廃棄ロス、売れるタイミングを逃す機会ロス(品切れとか)、そして最も経営者を苦しめるのが時間ロス

ぶっちゃけ時間ロスに関しては、どのようなロスが発生したとしても必ず付帯してきます。

ものを捨てる時間、チェックする時間、説明する時間などなど…。

これらがブログにはありません。

一度書いてしまったらあとは、効果が出るか出ないかだけで、それ自体の価値がなくなる訳ではありません。

だから副業に向いているのですが、かたや飲食業はどうでしょう?

経費の主である食材費と人件費。この2つは時間ロスの塊です。

食材費には時間ロスはないと思っている方、大間違いです。

もし食材費を抑えたいなら、農家さんのところへ足を運んで新鮮な野菜を分けてもらい、朝市に向かいお肉やお魚を吟味すれば、本当にいいものを安く仕入れられます。

それを近くのスーパーで済ませたり、納品業者に持ってきてもらったりして、本来自分が割くべき時間をお金に変えている。

余分にかかっている費用は、すべて時間ロスです

時給という仕組みも時間ロスを発生させる原因の一つで、例えば1時間のうち労働力が不必要な時間があるはず。

でもそれじゃあバイトを雇えない、仕方なく余分にお金を渡す。そう、時間ロスにまたお金を払っている構図です。

お金で時間を買ってもいいのは、本来それ以上の価値を生み出す場合に限ります。

ところが飲食店は、主に補填に使っている。それだと、かけた金額以上の価値を生み出すはずがありません。

とまあここまで言うと「利益が出ている店もあるじゃないか」という意見が出ますが、別にそのやり方がダメだとかそういうつもりで話していません。

ただ実際問題その方たちと同じようにできる人は少ないと思うのです。

だからこそ、時間にも費用が発生しているという感覚を持つことが重要で、ここまできてようやくこれから先の話ができるようになります。

生産性と精神論

結論から先に言います。

今回のテイクアウト事業で販売点数=売上を増やすつもりはほとんどありません

その理由は、ここまでの内容を読んでくれたらなんとなく分かってもらえると思います。

時間に費用がかかっていることを意識すれば、時間ロスを減らすこともまた利益率を上げることと同じ。

そこで目安となるのが労働生産性(トヨタが有名)。

なにやら難しい言葉ですが、要するに1時間仕事したときに得られる売上(利益)の割合です。

例えば、1人で8時間仕事して売上が8万円より、2人で3時間営業して8万円の方がいいよねってこと。

厳密にはちょっと違いますが今はなんとなくでOKです。

ただこの計算には問題があって、工場などの生産ラインだと割と簡単ですが、ことサービス業は生産(=売上)が発生しているかどうかわからない時間が多々あります。

接客時間がまさにそれで、お客様との会話が利益に繋がるかが不透明。だから、大手チェーン店などでは接客に時間をかけろとは教育されません。

されるのは、どうやって追加の注文につなげるかだけです。

ここで本当に知っておいて欲しいことが、実はこの不透明な時間こそ、従業員のモチベーションに大きく影響しているということ。

バイトをしていた時のことを思い出してみて下さい。仕事をバリバリこなしていた時より、仕事中にダラダラしゃべったり、お客様からのクレーム対応の方が記憶に残っていませんか?

それと同じで、人はなんでもない時間に感動や喜び、不満や怒りを感じやすくなっています。

だから前の記事で書いたように、生産性を上げるためだけに時間ロスを減らそうとしたところで、対応に余裕がなく気持ちが落ち込んでしまったら元も子もありません。

なぜなら、モチベーションが高いときほど生産性が上がるからです

勉強は1時間でもしんどいのにゲームなら何時間でもできる。しかもその瞬間の集中力は半端ないですね。

生産性を上げる条件に、精神の安定もしくは向上が不可欠だということが、ここまででご理解頂けたと思います。

ここに気づくまでに17年です。本当に長い長い期間です。

テイクアウト事業を始めた理由

前回と今回の内容を精査すると、今のままだと3つの問題が確定しています。

①こちらの想定通りにならない。②時間ロスに費用が発生している。③モチベーションを保つ必要がある。

そこでこれらを解決するための方法の一つとして、テイクアウトがあります。

その理由は、通常営業より①と②が劇的に改善されるから

では、③の対応はどうするのか?それが前の項で書いた売上を意識しないこと

この氷を入れないミックスジュース、はっきり言って利益率は低いです。

氷がない分食材をたくさん使用するし、カップもエコなものにするためにプラカップより高い金額のものを発注しています。

そうです。このミックスジュースは自己満足ドリンクなんですw

この自己満足テイクアウトこそが、自分たちのモチベーションを保つ唯一の方法だと気づき、今回始めたというのが、長い長いこの話の結論です。

要するに食事代金で利益を生むのではなく、お客様との関わり方で利益、言い換えれば自分たちに有益な時間にする

そのために、店内カフェを辞め、ごく少数のお客様のみご利用可能なお店となり、さらには売上を目標としないテイクアウトを始めるという、今までにないお店が誕生しました。

また別の機会でお話しますが、この新しい事業を始めるにあたり、個人事業主向けの補助金を利用したり、いろんな方の話を聞きました。この情報というのも大きな財産となるので、そのための時間を作ることも本当に大切です。

本当に長くなってしまいましたが、最後まで読んでいただいた方にもう一つだけ知っていて欲しいことがあります。

この結論にたどり着くまでに、家族と言い争いになったり、気分が落ち込んだり、やけになることもありました。

ただ、その期間を経て、今この記事を書けるぐらい気持ちがスッキリしています。

もちろん全てが正解だとは思いません。ですが、たくさんある答えの中から一応自分なりに導きだしたものですので、何かしら心に響くものがあればと思います。

もし何か思うことがあれば遠慮なくお伝え下さい。いいことも悪いことも含めて共有することも、一つの改善策だと思いますので。

最後までお読み頂きありがとうございます。

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